iPadなどのタブレット端末が普及し、学校でもデジタル教科書の取扱が話題になっています。
家庭用にもさまざまなデジタル教材、アプリが出ていますがこれらはどれぐらい有用なのでしょうか?
デジタルだと音や映像が出て分かりやすそうですし、
子供も喜んで使うので良さそうですね。
・・・・が、実は
私の手元にはデジタル教材の効果に否定的なデータが集まってきています。
まず、ディスプレイより紙の方が注意力理解力が高まるということ。
いろいろな実験がありますし、その理由は諸説あるのですが
どうやら、ディスプレイの透過光だと脳が受動的になり、
紙の反射光だと脳が能動的になるというのが有力な説のようです。
※画像引用元 カッシーのWebる。なぜ印刷したほうがミスに気づきやすいのか?透過光と反射光の使い分け。
実体験でも納得できることがあり、
例えばプログラマーのようなパソコンに精通して使いこなしている人でも
熟読すべき資料はわざわざプリントアウトしてから読みますし、
CGデザイナーでも紙に下書きをしてからデジタルで仕上げる人がたくさんいます。
このあたりはまだ研究途中とは言え、「紙」には何か秘密がありそうです。
また、友人の学習塾で、英語の単語を憶えるのに
紙の単語帳と任天堂DSの単語ソフトでどちらが成績に貢献するのか
効果測定を行ったそうです。
結果は、DSの負け。
生徒のやる気は、むしろDSの方が勝っていたそうですが、それが結果には結びつかなかったようです。
これを聞いて、私はいくつかのデジタル教材やアプリを分析して
何がいけなかったのか調査してみました。
すると、デジタル教材には、とあるやっては「いけない共通点」があったのです。
音や映像が出てくるのは、やはり紙ではできない大きなメリットですね。
英語はネイティブの発音がぜひ欲しいですし、
理科や算数数学の複雑な説明も
映像だと分かりやすくなることがあります。
ただ、それだけではカセットテープやビデオテープの時代と変わらないので
デジタル時代ならではの目玉機能をつけないと
・・・と、これらの教材の開発者は考えたのでしょう。
つけてはいけない機能をつけてしまいました。
それは、自動採点機能。
コンピュータが自動で丸をつけてくれたり
得点計算をしてくれたり
最近では、AIが苦手分野を特定して解くべき問題を自動で選んでくれたりします。
コンピュータの方が採点が正確ですし
答えてから即、正解不正解が分かって子供は楽しそうなので
よい機能に見えますが、
これは成績を下げる方向に働きます。
答え合わせ能力の低い小学校低学年であれば
ある程度有用なのかもしれませんが、
そもそもこの「答え合わせ能力」は、伸ばす必要がある能力です。
まず自分の回答と正答例を見比べて、採点基準を考えて正誤判断をすること。
もし間違えていたら、間違えた理由を分析して改善につなげること。
問題を読み違えたのか、知識が不足していたのか、
計算ミスなのか、回答形式が違うのか・・・etc
それを防ぐにはどうすればいいのか。
このサイクルがいわゆる成績アップにつながるのであって、
答え合わせ中がもっとも勉強が身につく時間と言っても過言ではありません。
自動採点では、この一番勉強が身につく時間を奪ってしまうのです。
また、テストで高得点を取ろうとすると自分の回答を「見直し」することが必須になりますが
自動採点では見直しする時間もとられなくなります。
テストに弱くなっていくわけですね。
苦手分野の特定も、機械的に行うのは危険な場合があります。
例えば、理科の電流で正答率が低い原因は
電流の理解度が低いのではなくて
少数の割り算が苦手なのかもしれません。
今回は、別にデジタル教材をディスるわけではないのですが
「答え合わせ」「丸つけ」は非常に大事な勉強のプロセスですよ、という話でした。