「コミュニケーション能力」と「受験勉強」の意外な接点

「コミュニケーション能力」の謎

「コミュニケーション力が重要」とは良く聞く言葉です。

企業の新卒採用では必ず「コミュニケーション能力を重視する」と言われます。今回はグローバルリーダーを目指す高校生達に話をしてきたのですが、グローバルリーダーの条件にも上位項目として挙げられます。

でも、「コミュニケーション力」って結局何なんでしょう?

この質問について具体的に答えられる人は非常に少ないです。けれどもなんとなく、「コミュニケーション力が大事」「コミュニケーション能力を育てよう」と言っているのです。

このコミュニケーション力とは何なのか?そしてなぜ「コミュニケーション」と無関係そうに見える「受験勉強」と関係があるのか?これを後輩である高校生達に紹介してきました。

次の画像は、そのプレゼンテーションで使ったスライドの1枚です。

コミュニケーションの因数分解

まず整理したいのは、コミュニケーション力とは、「受け取る力」と「伝える力」でできているということです。

「受け取る力」とは、話を聴いたり文章を読んだり空気を読んだりする力のこと。

相手の伝えたいことを受け取ってあげる力のこと。

「伝える力」とは、喋ったり文章を書いたり絵を描いたり歌ったりして自分の想いを相手に伝える力のことです。

ここで忘れられがちなのが、「受け取る力」の方です。

本当はどちらも同じぐらい大切なのですが、どうも他人に自分の意見を伝える能力こそがコミュニケーション力だと思っている人が多いのですよね。

ビジネスの世界では、「伝える力を鍛えましょう」とはよく言われます。そのためのセミナーや本もたくさんあります。パワーポイントの使い方とか、上手なスピーチの喋り方とか。

『伝え方が9割』という本はベストセラーになりました。

ところが、「受け取る力を鍛えましょう」とはなかなか言われません

ここで重大な問題が生まれます。本当は「受け取る力」と「伝える力」でコミュニケーションの両輪なのに、「伝える力」だけの方輪走行でエンジンをふかそうとする人が多いのです。

片方の車輪だけではまっすぐ走れないように、「伝える」一方ではコミュニケーションが明後日の方向に暴走してしまうのです。自分の話を聞かずに一方的にまくしたてる相手とは話をしたくないですよね?

私が敬愛するスティーブン・R・コヴィー著『7つの習慣』でも述べられていますが、相手に理解されるのは、自分が相手を理解してからなのです。

暴走する受験勉強

片輪コミュニケーションと同じように、明後日の方向暴走してしまいがちなのが受験勉強です。

受験勉強を「知識の暗記」だとか「解法の練習」だと思ってしまうと勉強はムチャクチャ非効率になります。

どれだけ時間をかけて必死に勉強しようと、まっすぐ進まない車ではいつまでたってもゴールに辿り着きません。どんな苦労も報われないのです。

このブログや、拙著『賢者の勉強技術〜短時間で成果を上げる「楽しく学ぶ子」の育て方〜』で何度も強調しているように、勉強の本質とは「他社理解」です。受験勉強で言えば、出題者が発しているメッセージをいかに受け取ってあげるかということです。

例として、東大入試2019年度の現代文を見てみましょう。

東大入試問題(2019年)国語第1問

(一)(傍線部ア)とはどういうことか、説明せよ。
(二)(傍線部イ)とはどういうことか、説明せよ。
(三)(傍線部ウ)とはどういうことか、説明せよ。
(四)(傍線部エ)とはどういうことか、説明せよ。
(五)漢字を楷書で書け
   a コウケン b ダイタイ  c サイキン

なんとビックリ!東大の現代文は全部同じ設問なのです。

傍線部とはどういうことか、説明せよ。

という1パターンだけ。

実は、私が受験した20年前は設問は3パターンあったのですが、ここ数年は2パターンで安定しており、ついに今年は1パターンになってしまいました。

現代文とは「勉強の仕方が分からない」と言われる教科の筆頭なのですが、東大入試に限れば勉強の仕方は明らかです。「傍線部とはどういうことか、説明せよ」という問題だけ対策すればよいのです。

結局の所、入試問題とは出題者からのメッセージであって東大は「どういうことか説明」できる人材を求めているということです。東大現代文対策はただ一つ、このメッセージに応えればよいだけなのです。

ちなみに(五)の漢字問題は a.貢献 b.代替 c.細菌 が解答です。

最高学府と呼ばれる東大の問題にしては簡単すぎる気がしますね。

ちなみに、漢字問題の配点はひとつ1点と言われています。仮にこの漢字問題を落としたとしても合否に影響することはあまりないでしょう。

おそらく受験者のほとんどが正解するぐらい簡単で、しかも配点が少ないのに果たして出題する意味はあるのか?とも思うのですが、実際は何十年もこのような簡単な漢字が出題されています。

確認できた限りは、30年以上この簡単な漢字問題が出題されています。

この簡単な漢字問題も、東大からのメッセージです。「この程度の漢字は書けて欲しいけど、書けなかったからといって落としはしないよ。」ということを伝えたいのですね。

「受験勉強として漢字問題集を頑張る必要はない。ただし、これぐらいの漢字が出てくる文章は読み慣れておくべきだ」というメッセージを受け取ってあげましょう。

出題者の伝えたいことを理解してあげれば、受験勉強はまっすぐゴールに向かい効率的になるのです。

「受け取る」ことは「敗北」ではない

このように社会でのコミュニケーションでも、受験勉強でも大事な「受け取る力」ですが、忘れられがちになってしまうには理由があります。それは

「相手を理解することは自分の敗北を認めることだ」とい勘違いしてしまうことです。

相手を理解するとは、相手の正しさを認めることで、ひいては自分が間違っていると認めることだと勘違いしてしまうのです。

しかし実際は、相手を理解しても自分が敗北するわけではありません。

孫氏に「彼を知り、己を知れば百戦殆からず」という言葉があります。

孫氏は、仮に戦争で相手をやっつけることが目的であったとしても、まずは相手の理解が必要だと言っているのですね。

相手を理解せずに仲良くなることはできないのはもちろんのこと、相手を理解せずに戦争や論争で勝つこともできません。

相手と自分、どちらが正しくどちらが間違っているかを決めるのは相手を理解してからです。

相手を好きになっても嫌いになってもいいのですが、それは相手を正しく理解してからです。

受験勉強もまずは、出題者のメッセージを受け取ってあげるところからがスタートです。好き嫌い、できるできないを決めるのはその後なのです。

出版しました【賢者の勉強技術 〜短時間で成果を上げる「楽しく学ぶ子」の育て方〜】

ブログの記事が、パワーアップして本になりました。

———–
賢者=「最短時間で楽しく最大の成果」を得る者
愚者=「努力は苦労」と履き違えている者

勉強はシンプルだった。
先生の本音を知れば、効率的で楽しい勉強技術は身につけられる。
教師家庭に育ったからわかった“勉強の本質”とは。
———–

「うちの子はゲームばかりで、勉強しなくて…」
「つらくても勉強すれば将来必ず役に立つのに…」
「かと言って、勉強ばかりのガリ勉にはなって欲しくないし」
「無理やり勉強させたらグレるかも?」
「うちの子はいつから塾に通わせたらいいの?」
「中学受験はさせるべき?」

上記のような悩みを持つ方に伝えたい、塾には一切行かずに、半年の受験準備で東大(理I)に現役合格した著者が構築した勉強技術とは。

教育はシンプルです。もしも教育が複雑に見えるなら、それは教育の見方に誤解があります。

教育がシンプルな理由

1.「効率的な勉強方法」は存在するから
2.「楽しい勉強方法」も存在するから
3.わが子の教育に責任を持っているのは親「ではない」から

勉強しているように見えないのに成績がよく、たいして苦労せず受験に受かる子たちは人並み外れた頭脳を持っているわけではなく、これらの勉強方法を実行しているからです。本書では、子どもがみるみる勉強して成果を上げる――そんな教育の真実をお話ししていきます。

 

目次

はじめに

第1章 学校という現場――先生の本音を知れば、子どもの努力をムダにせずに済む

■ 宿題で学力は伸びない
■ 宿題を10分で終えると怒られる
■ 先生のお気に入りは成績がよい?
■ テストは味方
■ テスト問題の予想は実力勝負
■ 勉強量ではなく勉強効率を上げなくてはならないワケ

■ 「努力」と「苦労」は別物です

第2章 主体性の正体――勝手に伸びる子を育てる秘訣は子どもの立場を知ること

■ 大人と子どもは生きている時間が違う
■ 子どもの成長に合わせて親の接し方を変える
■ なぜうちの子はゲームばかりして勉強しないのか?
■ 子どもは勉強が嫌いというのは本当か?
■ 勉強嫌いを育ててしまう「将来のため」という言葉
■ 「勉強させるには興味を持たせる」ことの罠
■ 勉強のやる気が出ないのは、勉強の仕方がわからないから

■ やりがいが生まれるのは、自分が立てた目標

第3章 最強の勉強技術――最短時間で最大の成果を上げる効率的な勉強法

■ 勉強とは暗記ゲームではなくてコミュニケーションである
■ 単純だが効果が高い「先生の話を聴く」こと
■ 塾に成績を上げる効果はない
■ 「親の年収と子どもの学力は比例する」!?
■ 偏差値を上げると受験に落ちる!?
■ 答え合わせは勉強の8割!
■ 高速で実力が上がる、答え合わせの五原則
■ デジ タル教材の効果が 薄い本当の理由
■ 学校の成績を上げるためのベスト勉強タイミング
■ 最強のノート術は「板書丸写し」
■ 劇的に勉強観が変わる「出題」の練習
■ どうやって「憶えるのか?」ではなくて、どうやって「憶えないか?」
■ 予習は不要

■ 5分で終わる効果的な復習

第4章 親にできるサポート――子どものやる気を引き出す声のかけ方

■ 勉強において、叱る場面は存在しない
■ 必ず成果が 出る目標の立て方
■ ペーパーテストの点数だけを目指していいのか? その通りです。
■ 子どもの将来を思うほど、目先のことに集中させる
■ 夢が現実になる「目標のブレイクダ ウン」という技
■ 立ててはいけない五つの目標
■ すぐに褒める。こまめに褒める。いちいち褒める。
■ ご褒美作戦の効果が薄い理由
■ 先生が嫌いという目標 先生が好きという目標
■ 教材を箱にしまうと成績が上がる!?

■ 東大生の不思議な分布

第5章 「勉強」の本質――子どもに手にしてもらいたい自立と自由

■ 学歴で手に入るのは、成功で も安定で もなく自由と可能性
■ 中学受験をどう考えるか? 中高一貫校に行くと成績が下がるというデータ
■ 高校受験できないことの知られざるデメリット
■ 中学受験は日本最難関のテスト
■ 浪人リスクをどう考えるか? 中学受験の分岐点
■ 目隠しで大学受験をしないために
■ 結局、中学受験のメリットは何なのか
■ 酢豚ゴルフ論争に隠された本当の「学力」
■ ついにわかった「勉強」の正体
おわりに――父と母へ

テスト問題を予想する超能力者

学校の定期テストや入学試験で、テスト問題を予想することは可能なのか?

 

大学受験ですと、予備校が模試で予想問題を作成したり

「センター試験予想問題集」みたいなものが書店に並びます。

しかし、的中率はあまり高くなさそうです。

むしろ、たまに的中すると大ニュースになります。

 

やっぱり、テスト問題を予想することなど超能力であって不可能なのでしょうか?

 

実は、テスト問題を予想している超能力者は意外といるのです。

 

どういうことかというと・・・

 

もしこれを読んでいるあなたが、勉強に自信がない人だったとしましょう。

それでも、人生に一度ぐらいはテストで満点をとった経験はないでしょうか?

小学校の漢字テストでも、英語の単語テストでも、どんな小さなテストでもいいです。

 

その満点をとれたテストを思い出せたら、それらにはある共通点があるはずです。

そう、それらはおそらく、問題が最初から公開されていました

「このプリントからテストが出るよ〜」と言われて、実際その通り出たパターンですね。

問題がすべて分かっていたので、

ちゃんと対策をしたあなたは満点をとることができました。

 

さてここで、

あなたのクラスにはテストで毎回90点とか満点をとる

非常に成績のよい子はいませんでしたか?

もしいたのならそれはさっき小テストで満点をとったあなたと同じです。

成績優秀なその子は、あらかじめ問題が分かっていたと考えるのが自然です。

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テストの得点率とは、予想が当たった率といっても過言ではありません。

「テスト問題が分かってれば満点を取れる」の逆を言えば、

「満点を取る人はテスト問題を予想できている」わけです。

テスト問題を予想できる超能力者とは、そんなに珍しくないのです!

 

今回は、なんとこの超能力を身につける方法をお話します。

 

さて、テスト問題を予想しようと言うと、

「テストを目的にして学問の本質的な理解につながらないのは邪道だ」とか

「ヤマを張るのは外したときに危険だ」とかいう意見が出てきます。

 

 

これらは、出題者の気持ちになってみれば分かる、的を外した意見です。

出題者はテスト問題を作るときに何を気にするかというと、

重要なこと や

本質的なこと を

バランス良く 出題したくなるものなのです。

 

・どうでもいいこと や

・枝葉のこと を

・偏って 出題する人は、まあいません。

 

つまり、テスト問題を予想するとは、

「重要なこと」や「本質的なこと」を「バランス良く」勉強することであって

邪道でも危険でもありません。

 

ただし、何が「重要」で「本質的」で「バランスが良い」のかは、

人それぞれの感覚で違います。

高校の○○先生と、塾の○○先生と、○○大学の入試問題作成者と、この記事を読んでいるあなたの基準はみんな違う可能性があります。

だから、出題者の気持ちを察する練習が重要であり、

インターネットで検索しても見つからないから自分で勉強する必要があるわけですね。

 

さて、ついにお待ちかねの「テスト問題を予想する超能力」の身につけ方をお話していきます。

 

大げさに言いましたが、問題を予想するということは、

出題者の気持ちを分かってあげるということ。

自分で問題を作ってみればいいのです

 

自分だったら、どの単元から出すのか?

解答形式は選択にするのか、記述にするのか?

難易度は易しくするのか、難しくするのか?

 

実際にやってみないと信じられないと思いますが、

これらのことを考えながら自分で問題を作ろうとすると

例え予想があたらなくても実力がガンガン上がっていきます。

 

ちょっとなれてきたら、自分の問題と

その先生の過去問を比べてみましょう。

「重要」「本質」「バランス」の感覚は近いでしょうか?

それとも全然違うでしょうか?

 

もし感性が合わなくても、とりあえずは相手に合わせてあげてください。

相手に合わせることができれば、それが予想できるということ。

超能力です。

 

友達と問題を出し合うという勉強方法がありますが、

この「出題者の気持ちを知る」という意味で、非常に有効な勉強方法です。

ただ、注意するのは、

可能ならクラスで一番成績がいい人と行ってください。

友達というと自分と同じぐらいの成績の人が多くなるのですが、

慣れないうちはグダグダになりがちです。

予想能力が高い人の視点は非常に参考になるでしょう。

 

なお、もしあなたがクラスで一番成績がいい人の場合は、

一番成績が悪い人と問題を出し合ってみてくださいね。

驚くほどの発見がたくさんあるはずです。

「偏差値」が必要ない本当のワケ

受験となると気になるのが学力偏差値です。

中高一貫校から大学まで、学校の序列はいわゆる偏差値ランキングで表されることが多く、

少しでも上のランクの学校に合格するよう努力することになります。

 

このような、学力や成功を偏差値で測る現状に対し、

「いや、日本の偏差値教育は間違っている!」と批判する人達もいます。

社会に出てからの人の能力は偏差値では測れないので

教育の指標としても不必要であるという主張ですね。

 

まあ、それはそれでごもっともなのですが、

私が学力偏差値が必要ないと考える理由は別にあります。

 

 

学力偏差値とは、例えていうなら温度計です。

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部屋においてある温度計なら、室温が正確に分かります。

 

あるとき、「部屋が寒いな」と感じたとしましょう。

そこで温度計を見たらなんと摂氏0度!寒いわけです。

普通は、暖房を入れて暖かくしようとしますね。

 

もしここで、温度計をお湯に入れて温めだした人がいたらどうでしょう?

「よし!もう30度だ!暖かくなってきたぞ!」

温度計は確かに30度を指していますが、部屋はまったく寒いままです。

まあ、バカですよね。

 

ところが、このバカみたいなことを

受験となると当たり前のようにやってしまうのです。

 

例えば・・・。

 

○○大学が第一志望のKさん。

予備校でこの○○大学の偏差値ランキングをみると

「偏差値65」と書いてあったとしましょう。

算出する予備校によって多少やり方は違いますが、

より正確には「偏差値65の人の合格確率は50%」というなラインを意味します。

 

で、模試を受けてみたら自分の偏差値で「40」が返ってきたとします。

すると

「大変だ!偏差値が25も足りない!なんとかして上げないと!」

と、偏差値を上げるための勉強を頑張りだすのです。

 

これって、部屋が寒いのに温度計を温める人と同じじゃないでしょうか?

 

 

そう、問題は、偏差値を上げたところで

本質的な問題である志望校の合格に近づかないことなのです。

 

○○大学の入試要項を見ても、

「合格条件は偏差値65以上であること」とは絶対に書いてありません。

重要なのは、偏差値を上げることではなくて

合格確率を上げること。

温度計を温めるのではなくて、部屋を暖める必要があります。

 

もっと怖いことを言いましょう。

 

偏差値を上げると、志望校に落ちます。

 

意味が分からないかもしれませんね。

しかしこれは統計上間違いないことなのです。

 

どういうことか?

「偏差値ランキング65」が意味する

「偏差値65の人の合格確率は50%」

という例でいくと、偏差値が65でも半分の人は不合格になるわけです。

では、どんな半分が不合格になるのでしょう?

 

途中で気を抜いた人?

本番に弱かった人?

 

いえ。不合格になるのは

合格のための勉強でなく、偏差値を上げるための勉強をした人です。

暖房を入れなかったので、部屋の温度は全く上がらず寒いままですから。

下手したら凍死してしまいます。

 

偏差値を気にしだすと、志望校合格に必要な勉強が何か分からなくなるというのが

 

 

最大の弊害です。

 

では、偏差値を上げるための勉強と合格のための勉強は何が違うのでしょうか?

参考記事:勉強時間を劇的に削減する3つの極意 その1【ゴールから始める】

もご覧ください。

勉強時間を劇的に削減する3つの極意 その3【出題者を理解する】

極意その3 出題者を理解する

 

成績を上げたかったら、教科の勉強するのはやめましょう。

 

おかしなことに聞こえるかもしれませんが、これは本当です。

教科をいくら勉強しても、成績はたいしてあがりません。

代わりに、「出題者」の勉強をしてください。

 

いわゆる成績が良い人、難関校に合格した人が共通して口にするのは

「テストに出るところは出るし、出ないところはでない」

ということです。ですので、テストに出るところを勉強すれば成績が上がります。

合格もします。

 

ところが、普通の人がこの言葉を聞くと、「ヤマ」をはることと勘違いしてしまうようです。

どういうことかというと、歴史の定期テストを例にとってみます。

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テスト範囲が

・奈良時代の文化

・平安時代の摂関政治

・平安時代の仏教

だったとすると、少ない時間で勉強するために

「平安時代の摂関政治にかける!」とか

「奈良時代の文化は捨てる!」とかして勉強範囲を減らそうとします。

 

この作戦は絶対に成功しません。

 

なぜなら、このような定期テストでは

「全範囲からまんべんなく出題する」というのがほとんどのケースだからです。

どこかの単元にヤマをはったら、仮にその単元が満点でも30点しかとれません。

では代わりに何を考えるべきかというと、

・重要なポイントはどこにあるか?

(藤原氏の家系図にはたくさんの名前があるが、重要人物は誰なのか?など)

・出題形式はどのようなものか?

(年号を憶える必要はあるのか?人名地名を漢字で書く必要があるのか?など)

・難易度はどのくらいの設定か?

(テスト範囲問題集そのままが出るのか、応用問題がでるのか?など)

といった、出題者の傾向です。

 

実は、ほとんどの学校の先生は、生徒にいい点を取ってもらいたいと思っているので

「ここが重要だよ」とか「ここを憶えておくように」とか

授業中にネタばらしをしています。

自作のプリントで授業をする先生であれば

テストもプリントの形式に沿ったものであることが多いですし、

問題集がテスト範囲に指定されていれば、まったく同じ問題が出ることも多いです。

 

言い換えると、

テストとは先生が教えたいことをこめたメッセージなのです。

 

最善のテスト対策は、

「先生の話を聴いて何を伝えたいのか分かってあげること」になります。

 

ここまでは定期テストの例をあげましたが、

入試試験でも同じことが言えます。

 

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なぜ入試試験が存在するのか?

それは形式がペーパーテストでも面接でも論文でも同じです。

「うちの学校にはこういう生徒に来てもらいたい」という表明。

 

新しく入ってくるであろう生徒に、

計算力を求めているのか?読解力を求めているのか?

知識量を求めているのか?独創性を求めているのか?

何を求めているかは学校によって違いますが

その求めているものを分かってあげれば勉強時間は劇的に少なくなります。

 

例えば、東大の英語の入試問題では

文法問題や難しい単語がほとんどでてきません。かわりに、長文が非常に長いです。

東大の先生たちは、受験生に

文法や単語の知識よりも読解能力を求めているわけです。

だから、東大入試において細かい英文法の勉強は必要ありません。

これだけで、勉強すべき事項は大きく削減できます。

 

「出題者を理解する」ことについてはこちらの記事でも深掘りしています。

テスト問題を予想する超能力者

勉強時間を劇的に削減する3つの極意 その1【ゴールから始める】

極意その1 ゴールから始める

電車や自動車に乗る時、たいていは目的地があるはずです。

学校に行きたい、会社に行きたい、映画館に行きたいetc.

もしも電車で映画館に行きたいのなら、まずは映画館の最寄り駅を探します。

そして、その最寄り駅につながる電車に乗ります。電車に乗ってから目的地を考える人はまずいません。

 

ところが勉強に関しては、みんな何故か

目的地を確認しないまま勉強を始めるのです。

 

勉強に関してよく聞く悩みがあります。

何から勉強したらいいか分からない」とか

勉強しても成績が上がらない」とか。

 

これは、

どの電車に乗ればいいか分からない

電車に乗っても目的地に着かない」と言っているのと同じことです。

学校に行きたいのか映画館に行きたいのか決めないと、どの電車に乗ればいいか分かりません。学校行きの電車に乗れば学校に着きます。映画館には着きません。

反対方向の電車に乗っている限りは、絶対に目的地には着かないのです。

 

勉強でも同じこと。まずは目的地(ゴール)を決めて、そこにたどり着く道筋を探すところから始めましょう。

 

「東大の受かり方」とは?

例として、東大受験において「ゴールから始める」を使ってみます。

東大に受かる方法は?と聞くと、

「たくさん勉強する」とか「偏差値を上げる」みたいな答えが返ってきますが、

これは、東京から札幌に向かうのに「新幹線に乗る」とか「グリーン車に乗る」と言っているようなものです。乗ったのが大阪行きの新幹線やグリーンでは札幌に着きません。一方、札幌に向かうのであれば飛行機でも自動車でも船でもいいのです。

実は、東大の受かり方というのは公開されています。

 

なんと、東大のホームページに掲載されているのです。

 

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平成28年の理科一類でいうと、第1段階選抜(いわゆるセンター足切り)で900点中728点を取り、第2次学力試験で550点中328点をとれば合格です。

第2次学力試験はセンターの900点が110点に圧縮して加算されていますので、センターも最低点の728点だったすると 728×110÷900≒89 点分がセンターでの得点になり、実際の2次試験では440点満点中239点をとれば合格です。

センターの得点率80.8%、2次試験の得点率54.3%で東大合格ということです!

意外と低いラインですよね。

 

さらに言えば、実はこの合格ラインの得点率は毎年安定しているのです。

img_0675※教学社の赤本より

理科三類を別格とすると、文科一類・文科二類・文科三類・理科一類・理科二類いずれも

センター8割、2次6割

前後が合格ラインになっています。第一段階選抜はもっと緩いときも多いです。この表は2012年からですが、私が受験した1999年度から10年ぐらい遡ってもこの数字は安定していました。

つまりは、センター8割、2次6割というのが東大合格のゴールになります。

 

次に調べるべきは、どんな問題で上記の得点を取ればいいのかということ。

これもまた、過去問として世に公開されています。

「東大って難しいのでしょう」という人は100%、この過去問を見たことすらありません。

映画館の場所も知らないのに「映画館って遠いのでしょう」と言っている人と同じです。

 

では、実際に過去問を調べると何が起こるのか。

 

「何を勉強すればいいか分からない」代表例である現代文をみてみましょう。

 

ここでは詳細を語りませんが、実は東大の現代文では、

設問が2パターンしかありません

その2パターンさえ対策すればよいわけです。

正確には漢字問題もありますが、どんな漢字が出題されるかというと・・・

 

(こうりつ)効率  (ちつじょ)秩序  (こうかん)交換 (2012年度)

 

拍子抜けするほど簡単ではないでしょうか?

世の人の殆どは、ゴールを確認することなく勝手に「難しい」とか「分からない」とか言っているのです。

ゴールから始める

これだけで、道のりはグンと縮まるのです。